Mark McGuireはオハイオ州クリーヴランドのバンド、Emeraldsのギタリスト。Emeraldsはフィードバック・ノイズ、アンビエント、ドローンといったアンダーグラウンド的なディープな音、小刻みに発表するカセットやCD-Rというアプローチで注目を集め、ウィーンのエディションズ・メゴというエレクトロニカのレーベルから発表された「Does It Look Like I'm Here?
」で世界的に認められたよう。個人的にもこのアルバムで初めてEmeraldsとMark McGuireを知ったことになる。昨年からの愛聴盤「Living With Yourself
」(2011ベストにも選ばせていただきました)。エクスペリメンタルとアコースティックの間を行き来するセンスが炸裂していた一枚。続く「Get Lost
」ではより洗練された音紋が奏でられていたと思う。



洗練されたセンスということでいうとライヴはかなり異なるものだった。またクラウトロックの至福感やManuel GöttschingやTerry Rileyなどのミニマルな祝祭感を中心に据えていたら、それは重要な側面ではあるけど、ライヴでは、彼の多くの可能性に驚かされることになる。
本編のライヴは3楽章にわかれていて(ご本人のいい方いうと楽章は「Clip」)、第1楽章のはじまり。ギターのヴィヴィットなストロークをループでレイヤーしてゆく。リズムや遠近感が変調し、時にエレピアノのような音とかアルカイックな要素が印象的。マシーンを使っているといってもめちゃくちゃ演奏していて感動。ストロークする右の二の腕のアルカイックな美しさにも感動(・・・失礼しました)。
今回のライブの白眉はこの第2楽章だったと思う。昨年みた「ニーチェの馬」(監督タル・ベーラ 公式サイト:http://bitters.co.jp/uma/)という映画を覆っていたような暴風が吹き荒れる。いつ止むのかもわからないようなすごさだ。それが遠ざかると、スペース・インベーダーとテトリスが混ざったようなレトロで懐かしい電子音が弾ける。追いかけっことかとびこみっこをしている感じ。しばらくしてベースをもったマーク。えぐるようなベースの重低音がフロアを強い電気のように流れる。壁に寄りかかっていたらすごい振動でまだ「ニーチェの馬」は続いていたんだと思い知る(笑)。終盤はカラフルな高音が空間を浮遊しぐるぐると回転しループする。こんな音作りがひとりでできるのかと驚くばかり。
第3楽章で初めて「Living With Yourself
」の楽曲を思い出すような生に近いボイスが流れる。リズムは記憶の奥で感じるような儚さがあり、音色がストリング調に変わったり、もっとアコースティックなったストロークはラテンや南国風の情熱的な広がりをみせていった。そして下のほうにもぐったマーク。自分の声を変換してループ。それを扇情的に重ねてゆくと、次第に不安がバーストしてゆくような感覚におそわれた。
安堵感とかちょっとチルウェイヴな音を想像していたら違った印象をもつだろう。演奏も肉体派(このへんはクラウトロック?)で、音自体にとても動きのあるライヴ。あるインタビューによると、彼がはじめて自分のギターを手に入れたのは9歳(ギターはこの星でいちばんクールなもの!)。若い時はブルースやロック、ヘビメタ、パンクをきいても、(ここからがすごいです)『Bill and Ted(邦題:「ビルとテッドの大冒険
」「ビルとテッドの地獄旅行
」。主演はキアヌ・リーヴス。最近実はシリーズの3が製作されるという噂があるんです!)』、『Airheads(邦題:「ハードロック・ハイジャック
」。ザ・ローンレンジャーズ(ブランダン・フレーザー、スティーヴ・ブシェミ、アダム・サンドラー)というロックバンドがラジオ局に売り込みいくコメディ。アダム・サンドラーの出世作)』、『BEAVIS AND BUTT-HEAD
(テレビアニメ。最近日本でもMTVで放映されはじめたようです)』などをみても、すべてがギターこそが最高(kick-assを使っています)と思わせられていたそうです(マークっておたくなの?)。なんとなく、聴覚だけでなく視覚的にもギターの存在を愛しているのがすごい、と思った。
ライヴについていえば、美しい映像が思い浮かぶとか、カラフルな絵が見えるとかはちょっと違う空間のあり方だったとも思う。アンビエント・サイケのようなドリーミーさだけでなく、時にはドリーミーを突き抜く野蛮なくらいの躍動があったりする。音そのものが何かを表現しているようだった。曲作りについてのインタビューで「自分が演奏することによって環境を形づくろうとすることもある」というフレーズが印象的、演奏がより能動的なのだと思う。
「Young Person's Guide to Mark Mcguire
」は未聴なのだけど、大きく興味をもった。彼のギターから始まる音楽への強い思いは、ゼロ年代後半のエメラルズの地元での活動、テープ・シーンと併走してきたのだろうか。方法論としてデジタル批判である以前に、テープをすり切れるまできいたり、アナログ盤を漁ったりという、コアなリスナーの音楽の愛し方(「ハイ・フィデリティ
」で描かれているような?)の行方を思う。
アンコールは「ゲット・ロスト」。かなり激しい楽章を重ねた後の、やさしさの回路のようなこの曲はやはり無敵。最後に指でVの字をつくって、やりとげた表情をみせてくれました。
5/9
Mark Mcguire/Living With Yourself

Mark Mcguire/Get Lost

- 2012.05.13 Sunday
- ライブレポ
- 15:40
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- -

- by ひとりっこ















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